ある日、子供が幼稚園からA4サイズの茶封筒を持って帰ってきました。
保護者全員に配っているそうで、中を見ると6ページにわたるアンケートに協力してほしいとのこと。
そういえば去年の今頃も同じような書類に記入した記憶があります。
内容は育児に関することで、某大学の研究に使用されるとのことでした。
研究に役立ち、ひいては世間の役に立つのならぜひ協力しましょう!
「すぐやる、すぐ済む」モードの私は、ボールペンを手に取りすぐに回答し始めました。
しかし数問答えた後で、だんだん速度が落ちていきます。
質問の内容は難しいものではないのに、です。
質問を何問か抜粋すると以下のようなものでした。
同居している家族は?
あなたの同居人は家事・育児を手伝ってくれますか?
子育ての相談相手はいますか?
週に何日スポーツをさせていますか?
お手伝いをさせていますか?
歩かせてますか?
外遊びをさせてますか?
自分(回答者)の思い通りにならない出来事に怒りをおぼえましたか?
などなど、質問事項は全部で95問です。
そういえば去年を思い起こしてみると、書いている最中にだんだんと腹が立ってきて、最後の方はものすごく汚い字で書きなぐっていました。
どうして私はあんなに苛立ったのでしょう?
そしてどうして今も再び苛立っているのでしょう?
たかがと言っては失礼ですが、無記名のアンケートです。
適当に答えたって何のお咎めもないはずです。
なのに私は腹を立てている。
協力を依頼している大学の先生の手紙もついているのですが、そこには「私も現在子育て中です。」と書いてあります。
私はその文言にもイラッとくるのです。
何が原因なのでしょうか?
しばらく考えた結果、望ましい回答が厳然としてあるからだということに気づきました。
そして育児アンケートとは、望ましい答えが分かっているのに、そうではない、できない私を浮き彫りにさせ、頼んでもいないアドバイスの声が聞こえてくる代物なのだ、という結論にいたりました。
先の質問に対しての望ましい答えと、それに付随するであろうアドバイスや感想は下記の通りです。
同居している家族は?
→できれば「ちびまる子ちゃん」のおうちみたいに、じじばばが一緒に住んでいるのが理想なんだけど...。
核家族?そっか~。なんか残念。
あなたの同居人は家事・育児を手伝ってくれますか?
→手伝ってくれるのが正解、手伝わないなんて論外。イクメンって言葉、今ではもう普通に使われてるよね。
休日は一日寝てるの?なんでそんな人、夫として選んだの?良かった~、うちはそんな人じゃなくて。
子育ての相談相手はいますか?
→多ければ多いほど良いよ~。実家のママに義理のママ、そうそうママ友だってたくさんいなくちゃ!お昼はみんなでランチしながら愚痴をこぼすのも良いリフレッシュだよね!ぼっちだなんて、だめだめ!
週に何日スポーツをさせていますか?
→転んだだけで骨折しちゃう子が増えてるんだって。そうならないように、もちろんスポーツ習わせてるよね?習ってないんだったら、毎日公園とか連れてって、たくさん体を動かさしてあげないと!どんどん軟弱になっちゃうよ~。ちゃんと考えてる?
お手伝いをさせていますか?
→当然、させてるよね?家庭の中で何かひとつ、役割を与えてあげるといいよ。毎朝新聞を持ってくるとか、お風呂掃除とか、食器を下げるとか。え?何もやらせてない?なにそれなにそれ。何もできない子になっちゃうよ?甘やかさないほうがいいってば~。
歩かせてますか?
→最近、車とか自転車の移動が多いじゃない?たくさん歩くのって大事だよ~。自分が楽することばっかり考えてちゃダメダメ。
外遊びをさせてますか?
→外遊び、超大事!子どもの脳は外遊びで育つんだから。毎日公園に行くこと推奨!あとさ、昔のようにジャイアンがいてスネ夫がいてっていう構図が、社会性を育てるのに大事なわけ。いろんな子と触れ合おうよ~。まさかこんな天気の良い日に、一日家でゴロゴロ引きこもってたりしないよね?
自分(回答者)の思い通りにならない出来事に怒りをおぼえましたか?
→育児ってイライラしちゃうよね~。分かる分かる。だから上の質問で、相談できる人いる?って聞いたの。女同士、食べてしゃべってストレス解消ってほんと大事なんだよ~。もっとママ友作りなよ?そんなんだから、いつもイライラしてるんだよ。
と、協力を依頼している“現在子育て中”の大学の先生から言われているように、だんだん思えてくるのです。
私も子育て中、だからあなたたち現場のことはよく分かるの。
忙しいとか大変とか、そういうことでできない自分をごまかさないで。
私だって働きながら育児してるけど、ちゃんとやってるよ?
そういうプレッシャーが紙面からひしひしと沸き立ってくるのです。
はい、ものすごい被害妄想です。
自分でも書いていて、考えの黒さに驚愕です。
でもアンケートに協力したいけど、できない理由が分かってよかったです。
そんなわけで、今年は申し訳ありませんが提出せずにこのアンケートはそっと破棄しようと思ったのでした。