「白いぼうし」という、小学生の国語の教科書に出てくる小説をご存知でしょうか。
タクシー運転手の松井さんが乗せたのは、女の子ではなく実は“もんしろちょう”だった、というお話です。
いま、小学校では音読にとても力を入れています。
家庭では音読をし、親が「声の大きさ」や「かっこに気を付けて読んだか」などをチェックして、花まるや二重丸などをつけるという宿題が出ます。
私の子も毎日こなしており、ここのところ読む教材はこの「白いぼうし」なのでした。
ところで私は前年度まで、あまり子どもの勉強にかかわっていませんでした。
本人も勉強していて楽しいと言うし、塾にも行っているし、私がかかわるとかえって喧嘩腰になってしまい、勉強に関しては外注という言葉もおかしいですが、外の人に任せようと思っていたからです。
しかし今年度は、先生からの「ご家庭で音読とプリントのまるつけをお願いします。」というお達しがあり、それではと腰をあげて久しぶりに子供の勉強に向き合ったというわけです。
「白いぼうし」は、タクシー運転手の松井さんがほりばたの紳士を乗せたこと、夏みかんの良いにおいの話をしたこと、紳士を降ろしたあと道端で白いぼうしの中にいたもんしろちょうを逃がしてしまったこと、代わりに帽子の中に夏みかんを入れておいたこと、女の子が急いだ様子でタクシーに乗ってきて菜の花横丁まで連れて行ったこと、気づいたら女の子はいなくて、菜の花畑にいるたくさんのちょうちょが「(帰ってこれて)よかったね」とささやきあっていた、いう内容です。
さて、私の子は運動が大好きです。
お友達もいます。
喧嘩もするけれど笑いあって、楽しく過ごすことができているようです。
授業中も、分かるところはがんばって手を挙げて発言しているそうです。
辞書を引くこともできます。
時々うっかりミスはあるものの、ひっ算もできます。
しかし私は、この子には何かが足りないんじゃないか、授業も楽しいよと毎日のように言っているけれど、どうも言葉どおりには受け取れない、もどかしい気持ちがいつもありました。
なぜなら毎日の会話でも、一生懸命こちらが説明していることが根本的に分かっていない。
分かっていないのに、とても気持ちよく返事をするものだから、こちらはその「分かっていない」ことに気づけない。
だから言われたことができていない。
さっき伝えたはずのことを、改めて聞いてくる。
「そそっかしいのかな。話を流しちゃうのかな。」
そんなふうに軽く考えていました。
しかし不安な気持ちは年々強まる一方でした。
そんなとき、私の気持ちに決定的な一撃を加えたのが、上記にある「白いぼうし」の音読だったのです。
もしかしてこの子は学習障害なのではと思う事があるんです、と学校の個人面談で先生にそれとなく相談してみましたが、ものすごく心配なら一度カウンセラーの予約を取ってみたらいかがでしょうと言われただけで、あなたのお子さんはそうだと思うとも、違うと思うとも言われませんでした。
まぁ先生にしてみたら、そんな責任あることに対してはっきりと断言はできませんよね。
ですので、もし学習障害と仮定した場合、私はどのような対応をとったら良いのか考えました。
色々と調べた結果、国語は教科書の学習ガイドを利用しながら勉強を見てあげるとよいということが分かりました。
そして「学習ガイドというものを使いながら一緒に国語の勉強やるよ。」と子に伝えた日のこと。
見せて見せてと言うので学習ガイドの「白いぼうし」のページを見せました。
そこには松井さんと、タクシーに乗ってきた女の子のイラストが描いてあります。
「あ、松井さんってタクシーの運転手だったんだ!」
元気にハキハキ、明るく言われました。
・・・約1か月、ほぼ毎日、「白いぼうし」を音読してたよね?
授業でもたくさん、取り上げてたよね?
あなた今まで、何聞いてたの?ちゃんと読んでなかったの?
つい、きつく叱りそうになってしまいましたが、ここは冷静に。
「ちなみに、松井さんは誰だと思ってたの?」
「最初に乗ったお客のおじさん。」
・・・マジか!
ほりばたで乗せた紳士が、ちょうちょを逃がしてヤバいと思って、代わりにタクシーにあった夏みかん、勝手に持ってきて置いたんかい。
もしかしてこの子の頭の中では、タクシーには運転手、女の子、紳士の3人同時に乗っていたのかしら。
いや違う、この子は頭の中で何も風景なんて思い描いてないんだ。
やっぱりこの子は読解力がない。
文字を読むことはできる。
言葉のかたまりというものも、たぶん分かってる。
しかし、点を線に結びつけることができない。
物語の大きな流れをつかむことができない。
行間とか、空気とか、そういうものを読む力が全くないんだ。
どうしよう、どうしたらいいんだろう。
専門機関に行って「そうです、この子は学習障害です。」と断定されたからといって、そこから何が変わるのか。
いずれにせよ、やはりここは、家庭学習で補っていくしかないのではなかろうか。
さらに色々と調べた結果、とりあえずは「ランドセル小学生」というソフトを購入し、前年度の遅れた分から取り戻していこうと思っている次第であります。