私には小学生の子がいます。
時々、赤ちゃんの頃はかわいかったなぁ、当時は大変なんて思っていたけど、今こうしてビデオを見ると、愛らしくてむちむちで一生懸命で、ぎゅーって抱きしめたくなるなぁ。
なんて目を細めてみたりもするのですが、いやいや、それは過ぎ去った昔の話だからこその、私の目には何かのフィルターがかかっていますぞ、とふと我にかえったりするのです。
なぜなら当時の私は「わが子が育てにくいと思ったら」という特集を組んだ雑誌を買い、何かあるたびにその雑誌を読み返し、ああでもないこうでもない、あぁ、ほんとにこの子は大変だなぁと育児に奮闘していたからです。
今ビデオを見返してみると、こんなに愛らしくよちよちした幼児のどこが育てにくいのか、憎まれ口すら微笑ましいのに、と首をかしげてしまいますが、その渦中にいるときは毎日必死だったことを覚えています。
朝起きるたびに、「あぁ、今日もまた一日が始まってしまった…何をして時間を潰そうか…」などと、憂鬱な気分になりながら、わが子を抱っこしていたのを思い出します。
さて、この当時、「ペネロペ」というアニメが放送され始めました。
絵柄がとてもかわいらしく、背景の色合いもとてもきれいで、私も子どもも大好きなキャラクターです。
このペネロペはちょっといたずらさんで、「あれをしたら、どうなるかな。これをこうしたら、みんな驚くよね。てへ。」と、いろいろとかわいらしい想像をしながら、大人から見るとあらあら、大変!という行動をとります。
しかしペネロペのお母さんは、いつも穏やかで、叱るときもとても落ち着いています。
例えば壁のらくがきを発見すると、お母さんは「あらあら、ペネロペ。だめよ。」と優しく注意します。
そうするとペネロペはちょっと口をとがらせながら「はぁい」と返事をし、すぐにいたずらを止めます。
なんてかわいいんでしょう!ペネロペ!
お母さんも穏やかで素敵!
きっと若者にとっては「将来はこういう風になりたいな」と思わせる、理想的なお母さん像ではないでしょうか。
しかしこのアニメを見ながら、私はいつも心の片隅で「1回の注意で事が済めば、そりゃぁ優しくなれるわな。」とやさぐれていました。
外でわが子を叱るお母さんに対し、「あ~あ、あんなに怒っちゃって。もっと優しく言えばいいのに。」って思ってるであろう世間様をよく見ます。
私も子どもを持つ前は、そう思っていました。
きっとそういう人はペネロペとかを見て、「ほら、ペネロペのママみたいに、優しく言えばそれで丸く治まるじゃない。だいたい、最近のお母さんって言い方がきついのよね。」って思ってるんだろうなぁなんて被害妄想を抱いたりします。
しかしもしも、あなたが本当にそう思っているとしたら、声を大にして言いたい。
あれは、1回で注意されて止める子だから通じるやり方なんですよ~~!!!
兄弟姉妹が何人かいる人、あるいは犬や猫を何匹か飼ったことがある人なら分かると思いますが、同じ親から生まれているのに、もしくは同じような性質のはずの生き物なのに、同じ屋根の下に住んでいても個々によって性格や性質が全く違うということはよくあることではないでしょうか。
以前飼っていた犬はすぐにトイレを覚えたけれど、今飼っている犬は何度教えても覚えてくれない、とかね。
お姉ちゃんは外遊びが好きだけど、妹はお家で遊ぶほうが好き、とかさ。
なのでよく「私も子どもを育てたけれど、こんなに何度も叱ったことなんてないわ。穏やかにしっかり注意すれば、キーキー言う必要なんてないのよ。」と上から目線で言ってくる分かってる感じのおばさんとかいますが、それはたまたまそのおばさんの子供が聞き分けのよい性格を持って生まれただけであって、世の悩めるその他大勢の、子を叱りまくるお母さんたちには見当違いも甚だしいアドバイスなわけですよ。
そのおばさんは、自分では気づいてないだけで、宝くじが当たったくらいにラッキーだったのです。
良かったね!
ムカッときたら、そう言ってやりましょう。
あと、こういうアドバイスもよくあります。
「事前にしっかり言い含めていれば、子どもも馬鹿じゃないんだからちゃんと言うこと聞くわよ。」
なんてね。
いやいやいやいや、たいていのお母さんは、出かける前に色々言っていると思います。
だけど、10の出来事のうち9のことを事前に言い含めていたとしても、残り1の、ついうっかり言い忘れたことを、なぜか子はするのですよね。
毎日24時間、子の行動すべてを事前に察知して言い含めるなんてできない。
子だって日々成長してる。
良いことも悪いことも、昨日しなかったことを、突然今日始める。
親としては試行錯誤の毎日なわけです。
そうしてだんだん、辛いなぁと思う日々の中にも、あ、こんなことができるようになってる!うれしい!なんて喜びがあったりして、かわいいなぁ、一緒にがんばろうね!と親子で過ごし、そのうちに幼稚園に入って集団生活でもまれてくるようになるのです。
そして小学生くらいになると、ある日ふっと、「小さい頃は可愛かったなぁ。」なんて目を細めてみたりするわけです。
そんなこんなで、私はいつも「ペネロペのママには、なれないなぁ。」と思っています。
何かやったら、がつん!と怒る。
自分の気分で怒鳴ってしまうことだってあります。
でも、いつも穏やかで優しくて、叱ったことがないお母さんなんて、あまりいないんじゃないのかな。
「叱らない育児」を世の中推奨してるっぽいけど、そうはいかないのがほとんどじゃなかろうか。
相手は子供だけれど、毎日私は全力で、本音で接してる。
今は小学生になったけれど、それでも毎日試行錯誤してる。
優しいペネロペのママみたいな幼児期の育児ではなかったけれど、振り返っても全く後悔がないから不思議です。